こんにちは。
先日、自動車のリースを残価設定ローンで組むことをおすすめされました。
でも、営業の人から残クレのデメリットはなにも説明されませんでした。
もしかしたらデメリットを知らずに契約している人ってけっこういるんじゃないかなと思い、記事を書きます。
- 残クレのメリット・デメリットってなに?
- 銀行のローンとどっちがいいの?
- 残クレが向いてる人ってどんな人?
という問題を解決していきます。
残価設定ローンの基本的な仕組み
まず、普通の車の買い方から説明します。
例えば300万円の車を買うとき、毎月5万円ずつ5年間払っていくとします。
でも残価設定ローンは少し違います。
「この車は5年後に100万円で買い取りますよ!だから残りの200万円だけ払ってください!」
という約束をするんです。
つまり毎月の支払いは200万円分だけでいいので、月々の支払いが少なくて済むわけです。
車が高くなるほど月々の支払い額が下がるのは魅力的に映るのではないでしょうか。
目の前にずっと欲しかった500万円のセダンがあって、普通のローンなら月々9万円、残価設定ローンなら月々5万円となれば購買意欲をそそられます。
残価設定ローンのメリット
残価設定ローンの大きなメリットは次の2点です。
- 月々の支払額が抑えられる
- 将来の買取価格を保証してくれる
最大のメリットは月々の支払額が抑えられること。
月々の支払額が安くなることで憧れの車種に手が届くかもしれませんし、シンプルに毎月の負担が少なくなるのは嬉しいです。
将来の買取価格を保証してくれるのはメリットでもあり、落とし穴でもあります。
落とし穴については後述しますが、仮に5年後に愛車が世間では無価値の鉄塊になったとしても、買取価格を保証してくれます。
個人的には残クレはやばいと思っているので、メリットと感じることは以上です。
残クレの話を最初に聞いたときは、
通常のローンと総支払額はどっちが安いの?
という疑問が浮かびました。
残価設定ローンのお得”感”
お得ではなく、お得感があるだけです。
通常のローンと比較した際、ほぼ確実に残価設定ローンの方が高くなります。
理由は、
- 二重の金利負担があるから
- 手数料が高いから
この2つが隠れたコストの正体です。
特に二重の金利負担。
意味不明ですね。
残価設定ローン特有の複雑さだと思います。
500万円の車を買ったとすると
残価設定ローンでは、300万円分を4.5%の金利で支払い、残りの200万円分を据え置くという形を取ります。
一見、4.5%という金利はそれほど悪くないように見えます。
しかし実際には、据え置いた200万円分にも金利が発生しているのです。
5年間で見ると、300万円分に対して約36万円、据え置いた200万円分に対して約32万円、合計で68万円もの金利が発生します。
これは実質年率6%相当の負担となります。
表面金利ではなく、実質年率は何%なのかを確認するようにしましょう。
担当の営業の方は困るかもしれませんが。。
残価設定ローンの金利計算の仕組み
500万円の車を例に、金利計算の詳細を説明していきます。
残価設定ローンの場合
1.通常支払分(300万円)の金利計算
まず、残価を除いた300万円分について、年利4.5%で計算します。
計算方法:元金均等返済で、毎年の金利負担は減っていきます
- 1年目:300万円 × 4.5% = 13.5万円
- 2年目:240万円 × 4.5% = 10.8万円
- 3年目:180万円 × 4.5% = 8.1万円
- 4年目:120万円 × 4.5% = 5.4万円
- 5年目:60万円 × 4.5% = 2.7万円
- 合計:約36万円の金利
2.残価設定分(200万円)の据置金利
計算方法:残価として設定した200万円には、5年間ずっと金利がかかり続けます。
- 200万円に対して5年間、毎年4.5%の金利が発生
- 毎年:200万円 × 4.5% = 9万円
- 5年分:9万円 × 5年 = 32万円の金利
総金利負担:68万円(36万円 + 32万円)
月々の支払い:約6.1万円(368万円÷60ヶ月)
通常の銀行ローン(金利1.9%)の場合
計算方法:500万円全額に対して、年利1.9%で計算します。
- 1年目:500万円 × 1.9% = 9.5万円
- 2年目:400万円 × 1.9% = 7.6万円
- 3年目:300万円 × 1.9% = 5.7万円
- 4年目:200万円 × 1.9% = 3.8万円
- 5年目:100万円 × 1.9% = 1.9万円
- 合計:約25万円の金利
総金利負担:約25万円
月々の支払い:約8.8万円(525万円÷60ヶ月)
比較まとめ
- 金利:43万円銀行ローンの方がやすい
- 月々の支払い:残価設定ローンの方が2.7万円やすい
残価設定分(200万円)には5年間、金利が固定でかかり続けるため、実質的な金利負担は表面金利以上に大きくなることがポイントです。
ただこれだけ見ると一概にどちらが良いかは判断がつきません。
住宅ローンを組む際でも、支払総額を安くすることだけを重視するのではなく、ライフプランを考えて月々の支払いが安いローンを選択することがよくあります。
次に残価設定ローンが引き起こす可能性のある悲劇をお話していきます。
残価設定ローンの落とし穴
500万円のセダンを買うことが長年の夢だった、カワイソウタさんが残価設定ローンを組んだとします。
当初のディーラーの提案は魅力的でした。
「5年後に200万円で必ず買い取ります。だから実質300万円分を月々7万円で払うだけでいいんですよ」
この説明を聞いたカワイソウタさんは、通常のローンなら月々11万円ほど必要なところ、7万円まで抑えられることに魅力を感じ契約を決意します。
しかし3年目に生活環境が変わり、より大きな車が必要になりました。
「じゃあ、この車を売って新しい車に乗り換えよう」
そう考えたカワイソウタさんを待っていたのは、想像以上の負担でした。
まず、契約途中での解約には何十万円もの違約金が発生すると告げられます。
これは、5年という契約期間を守れなかったことへのペナルティです。
通常のローンなら、一括返済手数料として2〜3万円程度で済むにも関わらずです。
次に、ローン残債280万円を一括で返済する必要が出てきました。
これは、まだ支払っていない月々の支払い分に加えて、残価として据え置いていた200万円分も含まれています。
さらに追い打ちをかけるように、現在の車の査定額が予想を下回りました。
当初、5年後に約束されていた買取額は200万円。
しかし3年目のいまの査定額はわずか150万円。
この50万円の差額も、カワイソウタさんの負担となったのです。
どうでしょうか。
最悪のケースを想定したらこんな感じになると思います。
買取保証について
でもカワイソウタさんの立場になると、
「買取額を200万円と約束されても実際には150万円なんてことをしてもいいのですか?」
「将来の買い取り価格を約束するのが残価設定ローンではないのですか?」
と、なりそうなものです。
残価設定ローンの買取保証には、通常いくつかの条件が付きます。
- 走行距離の制限(年間1万キロ以内など)
- 車両の状態(大きな傷や故障がないこと)
- 定期点検の実施履歴
- 事故歴がないことなど
このような条件を満たさない場合、買取額が減額される可能性があります。
先ほどの例で出した200万円→150万円というケースは、これらの条件が満たされなかった場合に起こり得る事例です。
事故車ともなれば、50万円くらい査定額が落ちてもおかしくありません。
この減額は契約上も認められていて、別に違法ではありません。
もちろんすべての条件を満たしている場合は、契約で定められた買取額での買い取りを拒否することはできません。
それを拒否するのはさすがに詐欺です。
つまり、「将来の買取価格の保証」は条件付きのものだと理解する必要があります。