馬鹿にされた。
見下された。
その瞬間、自分ならどう反応するか?
カッとなって言い返す。
それとも、唇を噛んで黙り込む。
多くの人はこのどちらかでしょう。
でも、本当に強い人間は、まったく違う反応をします。
新潟の貧しい農家に生まれ、高等小学校と夜間中学しか出ていない田中角栄。
15歳で単身上京してから、
- 田舎者
- 学がない
- 成り上がり
と、あらゆるレッテルを貼られ続けた男です。
ところが彼は、見下されるたびに不思議と強くなっていきました。
憎かった敵が味方になり
耳を塞ぎたかった批判が応援の声になり
消し去りたかった屈辱が輝かしい勲章に変わっていったのです。
なぜか。
それは「見下された時の5つの原則」を知っていたから。
今回は、田中角栄が人生をかけて身につけた、舐められたときの確かな対処法についてです。
めちゃくちゃ勉強になったので、シェアします。
目次
原則1:何があっても感情で返さない
人が誰かを攻撃する時、何を期待しているか。
- 怒らせたい
- 泣かせたい
そうやって優越感を感じたいのです。
ところが、そこで笑顔で「ありがとうございます」と言われたらどうでしょう。
相手は完全に拍子抜けします。
攻撃する意味がなくなってしまうのです。
田中土建を立ち上げたばかりの頃のこと。
役所の建設課長が事務所に訪ねてきました。
課長は書類をめくりながら、こう言い放ちます。
「田中さん、正直に言いますよ」
「あなたのような零細業者がこの規模の工事を受けるのは無理です」
「それに、あなたにこんな複雑な設計図が読めるとも思えない」
田中は腹の底から怒りが湧いてきた言います。
しかし、田中はこう答えたのです。
「課長、本当にありがとうございます」
「私どもが未熟だということをはっきり教えていただけるのは、ありがたいことです」
「設計図の見方も、もしよろしければ今日教えていただけませんか?」
課長は何も言えませんでした。
そして驚くべきことに、その日、予定を大幅に超えて事務所に残り、設計図の読み方を丁寧に教えてくれたのです。
帰り際、課長はこう言いました。
「あなたは面白い人ですね。この件は、何とか掛け合ってみますよ」
怒りを見せるのではなく、笑顔を見せる。
それだけで相手の攻撃は無力化されます。
原則2:決して相手の土俵に乗らない
見下してくる相手の価値観で勝負をしたら、こちらが不利になるだけです。
だから戦いの場そのものを変えてしまうのです。
初当選直後、議員会館の廊下でのこと。
向こうから東大法学部出身の先輩議員が、秘書を連れて歩いてきました。
すれ違いざま、その男がわざと聞こえる声で言います。
「お、田中君」
「君は選挙には強いらしいが、これからは国会での論戦だ」
「高等小学校卒では法律論議についていけるかね」
あからさまな嫌味です。
周りの秘書たちも、この場面を見ています。
そこで田中はどう反応したか。
彼は立ち止まり、こう答えます。
「先生、おっしゃる通りです。私には学がございません」
「ですが、私には新潟の雪の中で凍える農家の顔が見えます」
「法律の条文は覚えられなくても、国民の苦しみは骨身にしみて知っています」
「難しい言葉で議論するより、国民の暮らしを本当に理解することの方が政治家には必要ではないでしょうか」
その議員は何も言わず、足早にその場を立ち去りました。
田中は学歴という土俵で戦わず、現場感覚という別の土俵で勝負したのです。
後で聞いた話では、その議員は別の議員に「田中は、侮れん」とこぼしたそうです。
学歴で攻められたら、そこで戦わず、経験や誠意という別の場所に持っていく。
そうすれば相手の攻撃は 空振りに終わる。
相手が用意した戦場ではなく、自分の戦場で戦うのです。
原則3:批判を成長の種として受け取る
相手の指摘は、自分の弱点を教えてくれる貴重な情報です。
財政問題を議論する閣議でのこと。
田中が財政見通しについて説明を終えると、大蔵官僚出身の閣僚が口を開きました。
「田中大臣、この見通しは楽観的すぎませんか?」
「大臣は財政の基礎、どこまでご存知なんです?」
田中は資料を見ながら、できるだけ冷静に反論しました。
しかし内心では、悔しさと恥ずかしさで胸が張り裂けそうだったといいます。
確かに、財政を体系的に学んだことはありませんでした。
閣議が終わると、田中はすぐに秘書を呼びこう伝えます。
「今夜から財政の勉強会を開くから、若手の官僚を5人集めてくれ」
その夜から猛勉強が始まりました。
大蔵の若手を次々と呼んで、夜中まで財政の仕組みを教えてもらったのです。
「俺は学がない。だから一から教えてくれ。遠慮はいらん」
田中は自分のプライドを完全に捨てて、ひたすら学び続けました。
そして3ヶ月後。
また同じテーマが議題に上がったとき、今度は田中が誰よりも詳しく説明したのです。
閣議が終わった後、あの閣僚が近づいてきました。
「田中さん、見事な資料でしたよ」
田中は深く頭を下げました。
「あの時のご指摘がなければ、ここまで勉強しませんでした。ありがとうございました」
弱点を指摘された時、そこに少しでも真実が含まれているなら、それは成長するための貴重なヒントです。
プライドを捨てて素直に学ぶ。
悔しさをバネに人の何倍も努力する。
それが最高の反撃です。
原則4:一歩引いて相手を逆に目立たせる
これで完全に立場が逆転します。
ある党の会議でのこと。
派閥の重鎮が、大勢の議員の前でこう言い放ちます。
「田中君、君のような学のない人間に複雑な経済政策が分かるのか」
会場に笑いが起きかけました。
明らかに田中を貶めるための発言です。
その瞬間、田中は立ち上がり、重鎮に向かって深々と頭を下げたのです。
「先生、ただいまのご指摘、感謝いたします」
「今のお言葉をご指導として議事に残させてください」
「未熟な私を皆の前で導いてくださるとは、ありがたいことです」
重鎮は何も言えず、そのまま座り直しました。
会場の空気が一変したのです。
その後、田中は配布資料に「先生のご指導により修正」と明記し、ていねいな礼状まで送ったそうです。
それ以来、その重鎮は二度と大勢の場で田中を貶すことはありませんでした。
なぜか。
田中が引いたことで、逆にその人だけが一方的に人を叩いた姿として周囲の記憶に残ってしまったからです。
人に見下された時、正面からやり返せば泥仕合になる。
しかし一歩引いて受け流せば、攻撃は一人芝居に見えて、周囲の目は自然とこちらに傾くのです。
原則5:関わらないことで心を守る
世の中には残念ながら、どうやっても悪意を向け続けてくる人がいます。
あるとき、同じ派閥の若手議員が田中の悪口を言いふらしていると耳に入りました。
「田中は学がないくせに偉そうにしている。いつか化けの皮が剥がれる」
最初、田中はいつものように対応しようと心がけました。
廊下で会ったとき、笑顔で「最近どうだ」と声をかけたのです。
しかし次の週も、また同じ悪口を言っていると聞きました。
だから今度はその男を食事に誘いました。
「何か気に入らないことがあるなら言ってくれ」と、直接話し合おうとしたのです。
しかし翌月も、その男は影で同じことを繰り返していました。
田中は悟りました。
こういう人間には、何をしても無駄だと。
そして秘書にこう告げます。
「こういう人間はどうしようもできん」
「残念だが諦めてくれ。あの男とは必要最小限の付き合いにする」
その男の悪口はその後も続きました。
しかし、田中の心は不思議と穏やかだったといいます。
もう気にする必要がなくなったからです。
戦う必要のない相手とは戦わない。
これも立派な強さです。
心が疲れ果てている時は決して無理をしない。
逃げることも距離を置くことも、自分を守るための立派な選択肢なのです。
見下されたときの対処法まとめ
田中角栄が教えてくれた5つの原則を、もう一度振り返りましょう。
- 何があっても感情で返さない ― 怒りではなく笑顔で返す
- 決して相手の土俵に乗らない ― 自分の戦場で戦う
- 批判を成長の種として受け取る ― 悔しさをバネに何倍も努力する
- 一歩引いて相手を逆に目立たせる ― 引くことで立場を逆転させる
- 関わらないことで心を守る ― 戦う必要のない相手とは戦わない
どれも素晴らしい教訓ですね。
ですが、真似をするのはカンタンではないと思います。
知っているのとできるのは全く違いますからね。
それと、自分の都合のいいように解釈するのは危険です。
例えば、関わらないことで心を守る。
これは、積極的に関わったうえで、関わらなことを選択しています。
最初から「相手はどうしようもない」と他責にするのとでは、わけが違いますよね。
行動や発言も見習いたいですが、心を見習いたいと思いました。

